こんにちは、ヒョーかるです。私は福祉業界で適応障害や休職、復職を経験して、これは飄々と軽々と生きていけるんじゃないか?と学んだことや思ったことをコツコツお届けしたいと思います。
今回はライフ・キャリアの視点から、働くことを考える、キャリア概論について書いていきます。「あぁ、これがキャリア概論だったな」とキャリア概論という言葉も忘れていた私です。
発達課題
●個人が健全な発達をとげるために、発達のそれぞれの時期で果たさなければならない課題(ハヴィガースト)
→「発達課題とは、人の生涯のそれぞれの時期に生ずる課題で、それを達成すればその人が幸福となり、次の発達段階の課題の達成も容易になるが、失敗した場合、その人は不幸になり、社会から承認されず、次の発達段階の課題をなしとげるのも困難となる課題である」
●発達課題を生み出す要素
①身体的成熟 ・歩行の学習など ②社会からの文化的要請 ・読みの学習、社会的に責任ある行動をとることの学習など ③個人の希望・価値 ・職業の選択や準備、価値の尺度など
中年期の危機
●上昇停止症候群(小此木啓吾)
→青年気以降、自分なりに努力をし、満足と生き甲斐を見出しながら暮らすための前提であった「年齢とともに地位も、収入も上がっていき、社会的な力も高まり、家庭も豊かになる」という右肩上がりの思い込みが幻想にすぎないのではないかという現実を突きつけられ、これまでの信念が破綻することによって生じる心身の症状を指す。
→残りの人生で、自分にしかできないことは何なのか、どう望んでももはやできないことは何なのか、これらの問題を見つけることは中年期の大きな課題である。
→そして、どれほど努力したところで、実現が不可能なこともあるという現実を静かに受け入れることも要求される。厳しいことではあるが、これも中年期の大きな課題のひとつとなってくるのだ。
*大事なものは残しながら、他のものを捨てていく。
「中年期の危機」はリワーク(復職支援)でもちょうどこの年代の方の利用が多かったです。また、私は10代から20代、20代から30代と移り変わる時期にメンタルヘルスを損なっています。「中年期の危機」を知って、おそらく30代から40代の移り変わりもきっと何かあるだろうなと予測が明確になりました。崩れる可能性もあるだろうけど、準備をしておくことはできると一つの安心材料になっています。
キャリアとは
●キャリアの4つの定義
①昇進や昇格によって職業上の地位が上昇すること 例)公務員のキャリア、ノンキャリア組 ②医師、法律家、教授、聖職者などの伝統的に評価されてきた専門的職業 例)キャリア・ウーマン ③ある人が経験してきた仕事(職業)の系列 ・職業に就いたことのあるすべての人 ④職業に限らず、生涯を通じてあらゆる役割や地位、ないし身分の系列 →ライフ・キャリア
「キャリア」という言葉は私も「職業や仕事の地位」のみのことだと理解していました。しかし、③や④もキャリアとして言えることをリワークで知り「こんなことも経験したな、こんなこともやってきたな」と自分のやってきたことに目が向けられるようになりました。こんなにやってきた自分はすごいんじゃないかと気づき、自信がついた記憶があります。
キャリア語源
・荷車、戦車→何かを積んで運ぶ、移動→身についた何か
・わだち→過去からずっとつながってきて、現在にいたり、将来につながっていく
ライフ・キャリア・レインボー(スーパー)
こちらでも少し書いています
●スーパーは、キャリアを様々な人生の役割の組み合わせとして捉えた
●キャリアを労働者としての役割の他に、子ども、学生、余暇享受者、市民、家庭人の役割も含めて総合的に捉えた
- 学生:学ぶことに従事する人
- 余暇人:余暇を過ごす人
- 家庭人:配偶者・親
●人生を虹にたとえ、各役割が同時に存在していることを示している
●これらの役割を個々人がいつ、どのように果たしていくのかは、社会的環境に影響されるが、自分の役割とどのように関わっていくのかを決定するのは個人によるとされる
このキャリアの虹を見て「この年代にはこんな役割があって、と見通しが持てるな」と感じました。「この年代に私はこれができてない…だめだ」と捉えてしまうこともあるかと思います。私も初めの印象はそうでした。私は「この年代ではこんなことがあるみたいだけど、私はこんな生活をしていたいな」と準備をしたい気持ちや小さな望みを持てる感覚になりました。そして「確かに人間は1つの役割だけじゃなくて、複数の役割を同時に持っている。そりゃ生活していくだけで精一杯になるよな」と今思えます。
*長いスパンで時々見つめ直すのも大事 *ゆるーく働くことを考えることで、他の職も考えられる
職業的キャリア
●職業的キャリアがライフ・キャリアの大きな核になる
・人生の連続上にある、職務等の経験の連続
・キャリアの節目での連続
→「(職業的)キャリアとは生涯を通しての人間の生き方・表現である」(シャイン)
→「成人になってフルタイムで働きはじめて以降、生活ないし人生(life)全体を基盤として繰り広げられる長期的な(通常は何十年にも及ぶ)仕事生活における具体的な職務・職種・職能での諸経験の連続と、(大きな)節目での選択が生み出していく回顧的意味づけ(とりわけ一見すると連続性が低い経験と経験の間の意味づけや統合)と、将来構想・展望のパターン」(金井)
*社会と関わりながら伸ばしていくもの。余暇人にはないキャリア。
例)子供と関わるのが好き(職業的なキャリア)
お金をもらって好きなことをしていく
*人生のテーマが見つからないと詰まってしまうことがある。
こちらは年数が経って理解できるようになったと感じます。人と関わる仕事をしている自分はこの軸は変わらないんだろうな、続いていると言うことは人生のテーマでもあるんだろうなとじんわり見つかってきたように思います。
組織内キャリア発達
●組織内におけるキャリア発達について、シャインは組織内キャリア発達段階説を展開した。
1 | 成長・空想・探究 | 0~21歳 | |
2 | 仕事世界へのエントリー | 16~25歳 | リアリティ・ショック |
3 | 基本訓練 | 16~25歳 | |
4 | キャリア初期の正社員資格 | 17~30歳 | |
5 | 正社員資格、キャリア中期 | 25歳以降 | |
6 | キャリア中期危機 | 35~45歳 | 中期キャリア危機 |
7 | キャリア後期 | 40歳~引退まで | |
8 | 衰え及び離脱 | 40~引退まで | |
9 | 引退 |
*ハヴィ・ガーストの発達課題をシャインは組織内に持ってきた。 *文化によって違いはある。
リアリティショックは身近に感じられるかと思います。最近、耳にするようになった、20代後半〜30代の多くが経験する心理状態である「クォーターライフ・クライシス」は4「キャリア初期の正社員資格」5「キャリア初期の正社員資格」あたりを指すのだろうと思えます。
「外的キャリア」と「内的キャリア」
●キャリアを捉えるときには「外的キャリア」と「内的キャリア」の2つの軸から捉えることができる。
→外的キャリア(名刺に書ける) ・あるひとが、ある職種につき、昇進していく過程で、その職種または組織から要請される具体的な段階。 →内的キャリア(名刺に書けない) ・個人がキャリアにおいて主観的に遭遇し、経験する段階と課題である。 ・自分の仕事生活がその中で果たしている役割について、心の中にある種のイメージ。
外的キャリア
●あるひとが、ある職種につき、昇進していく過程で、その職種または組織から要請される具体的な段階。
●3つの次元
①「垂直的」キャリア成長 ・一般職層→管理職層→経営層などの階級の上昇 ②「水平的」つまり横断的キャリア成長 ・販売⇄マーケティング⇄研究開発などの職能拡大 ③「部内者化」つまりメンバーシップの次元に沿い、組織の核へ向かう移動 ・組織内メンバーシップの増大
内的キャリア
●個人がキャリアにおいて主観的に遭遇し、経験する段階と課題である。
→「外的キャリア、すなわち実際の職務におけるステージがどの段階であろうと、誰もが自分の仕事のなかで、どこに進んでいるのか、どのような役割を担っているのかについての主観的な感覚を有している。それが『内的キャリア』である」(シャイン2006)
→ある人の仕事生活を他者がどのように見るかとは別個のもの
→自分の仕事生活がその中で果たしている役割について、こころの中にある、ある種のイメージ
*昔は外的キャリアの連続性が保障されていたから大事にされていたけど、外的キャリアは突然分断されてしまうから、今は内的キャリアを大事にしていく方がいい(リワークの心理士より)。
外的キャリアの「垂直的」キャリア成長はこの5〜10年、得られる魅力がなくなっていると私は感じるため、減っていくと思います。「水平的」キャリア成長に重きをおく人は昔から変わらず多いと思います。「部内者化」の成長ができると仕事のしやすさに大きく関わるため、メンタルヘルスケアにも大いに役立つと私は思いました。
キャリア・アンカー
●職業上の自己概念/セルフイメージ
①自覚された才能と能力 ・「~~が得意である」 ②自覚された動機と欲求 ・「~~によって動機づけられている」 ③自覚された態度と価値 ・「仕事を進める上で何に価値を置いているか」
●個人の「内面に」あり、キャリアの決定と選択に対して、ひと組の推進と抑制の力として働く
→もし失敗しそうな環境、あるいは自分の欲求がみたされないか。自分の価値が危うくされる環境に入るなら、何かもっとしっくりするものーーしたがって「アンカー」の比喩ーーに「ひきもどされる」であろう。
●どんなに難しい選択を迫られたときでも放棄することのできない自己概念
*あなたはなぜこの仕事を選んでいるのかがわかる *アンカー:「錨」
このキャリア・アンカーを調べてわかると、仕事をしていて違和感を持ったり、鬱々しながら仕事をしている自分を気づかせる1つの指標になると思います。
例えば、全般管理コンピタンス(GM)が低いのに、管理職になって対処できなくなり休職したり退職することになる、がわかりやすい例です。また、専門・機能別コンピタンス(TF)が高いのにマルチタスクを求められる総合職についてしまう、もわかりやすい例です。
こちらの記事でも書いています
トランジション(ブリッジズ)
こちらの記事でも書いています
●トランジションとは
→移り変わり、移行、過渡期、変わり目と訳される。キャリアの分野では「転機」「節目」と訳される。 →人生のターニング・ポイントやライフ・イベント →今までのやり方を少し変えなくてはならないような出来事
トランジションの段階
段階 | 内容 | |
第1段階 「終焉」 | 「離脱」 | 「~~として働いていた」「~~として暮らしていた」とそれまで自分を位置付けていた文脈からの「離脱」 |
「アイデンティティの喪失」 | それまでの自分の「アイデンティティの喪失」 | |
「幻滅」 | 自分を取り巻いていた世界がもうそれまでのようではないことへの「幻滅」 | |
「方向感覚の喪失」 | 「自分はどうなるのかな…」とそれまでの将来に関する計画や感覚が失われる「方向感覚の喪失」 | |
第2段階 「中立圏」 | 「自分の働き方、暮らし方はどうだったかを振り返る」 求められることは一時的な喪失感に耐えること。 喪失に伴う空虚な感覚を受け入れるしかなく、何も生産的なことをしていないような感覚があるが、自己の内面世界に向き合う段階。次の第3段階を迎えるために必要なプロセス。 | |
第3段階 「開始」 | 「今までのパターンでやるとうまくいかなくなった。それに気がつき、方法を変える」1~5までの段階を通して実現される、「内面の再統合」によって始まる。 |
キャリア・トランジション・サイクル(ニコルス)
●キャリア・トランジション・サイクル →ひとつのトランジションは準備→遭遇→順応→安定化の4つの段階のサイクルで考えられる →ひとつのトランジションの終結が、次のトランジションのサイクルに結びつく →安定期と移行期が繰り返し現れる
●「一皮むけた経験」(金井) →一回り大きくなった、より自分らしいキャリア形成に結びついた経験 →キャリア・トランジションの場面で生じ、キャリアトランジションの結果 →「一皮むけた経験」に結びつくためには ①数年の時間幅では、一つ一つのサイクルをより深く生き抜くこと、サイクルの途中で投げ出さないこと、必要な時にはメンターなどの支援を受けること ②10年、20年を越えた長期的な時間幅では、同じところを回るのではなく、スパイラル状にサイクルを高度化させていく
*キャリア・トランジション・サイクルは避けられない。どう対処して安定期に戻すか。
成長することは変化。うまく乗り切ると一皮むける。
まさにこの段階は今、私がこの数年で体感している段階です。「休職期間というのはトランジッション、転換期なんだよ」とリワークの臨床心理士に言われたことがとても耳に残っています。そして「休職することって悪いことじゃない、必要なことなんだ」と思えた内容です。
人生上の転機とその対処(シュロスバーグ)
●転機の識別(転機のタイプ)
・予測していた転機(退職・病気)
・予測していなかった転機(交通事故)
・期待していたものが起こらなかった転機
●転機の持つ意味を理解するために必要なこと *こうやったら転機を抜けられるというのはないけれど、 →どのタイプに該当するか →転機の前後関係あるいは背景 →どの程度の重大さをもつか ・個々の役割、人間関係、日常生活、考え方をどの程度変えていくか
4つのS
●どんな転機でも、それを見定め、点検し、受け止めるプロセスを通じて乗り越えていくことができ、また、この転機を乗り越えるための資源は、4つのS、すなわちSituation(状況)、Self(自己)、Support(周囲の援助)、Strategies(戦略)に集約される。
*4つを理解して、スパイラルを抜けていく。 *リワークはトランジションを抜けるためのプロセス。今までのやり方が無理だったから、やり方を変えましょう。
計画された偶発性(クランボルツ)
●わたしたちのキャリアは用意周到に計画できるものではなく、予期できない偶発的な出来事によって決定される。
●わたしたちができることは →心を大きく開いて、その偶発的な出来事を見逃さないようにすること →偶発的な出来事に出会ったときのために準備をしていること →偶発的な出来事に出会ったときには、その偶然を自らの主体性や努力によって、自らのキャリアに最大限活かしていくこと
●偶発的とはいっても、その出来事が起こる前にはさまざまな自分の行動があるわけですから、自分の行動がその偶発的な出来事を決定しているとも考えることができる
→「チャンスは、それを迎える準備のできている人にだけやってくる」(パスツール)
⇨「偶然は必然でもある」(クランボルツ)
「偶然の出来事を意図的に創り出す」
こちらの記事でも書いてます
クランボルツさんの計画された偶発性理論は私の中で電気が走った内容でした。そんな本に出会えたことに感謝です。
最後に
とても長い内容でしたが、年数を重ねてこのキャリア概論の内容をふと思い出します。そのくらい長期的な効果がある講義内容でした。復職してから「あ、これか〜!」と気づきにつながる内容が私にはとても多いです。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
この記事が何かのお役に立てたら幸いです。また次の記事でお会いしましょう。
参考図書 ●「ガイドライン 生涯発達心理学」二宮克美・小野木裕明・宮沢秀次編 ナカニシヤ出版 ●「中年期とこころの危機」高橋祥友 NHKブックス ●「よくわかる 産業・組織心理学」山口裕幸・金井篤子編 ミネルヴァ書房 ●「新版 キャリアの心理学」渡辺三枝子編 ナカニシヤ出版 ●「キャリア開発の産業・組織心理学ワークブック【第2版】」石橋里美 ナカニシヤ出版
コメント